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京の詩季彩
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甘泉堂

ろーじの奥にたたずむ名店
 京言葉で、人ひとりがようやく通れるほどの細い路地の事を「ろーじ」と言います。一般的に地元の人しかあまり通らない道かも知れません。
 八坂神社から真っ直ぐに東西にのびる大通り・四条通。ちょうど老舗の茶屋・一力(いちりき)さんの斜め向かい辺りに、賑やかなこの通りから北に向かって一本の小さな「ろーじ」がのびていることをご存じでしょうか。一歩踏み入れたら、そこは祇園の迷宮。「ろーじ」の奥に静かに佇むのが、知る人ぞ知る老舗の和菓子屋・甘泉堂さんです。
八坂神社
四条通からのぞむ八坂神社
 通りに面したガラスケースには、羊羹、最中、生菓子など色々な種類の和菓子が並んでいて、ケース越しに、女将さんが行き交う人と時折言葉を交わす情景は、懐かしさを覚えます。
 甘泉堂は創業約120年。店の奥に掲げられた、いかにも年月を経た様相の『甘泉堂』と書かれた看板。なんとこの書は、近代日本を代表する明治の文人画家・富岡鉄斎の筆によるもの。鉄斎がお店に宛てた手紙なども何通か残されており、当時、鉄斎をはじめとする文人たちにも好まれたことがうかがえます。
 また、今も祇園の一流どころから注文を受け続けるこのお店。場所柄、厳しい目の客から育まれ、愛されてきたであろう老舗の空気を感じることができました。

ろーじの入り口 甘泉堂の青い暖簾 店先のガラスケースには和菓子が並ぶ 富岡鉄斎の書を元につくられた看板
ろーじの入り口、この看板が目印 青い暖簾がかかる甘泉堂 どの商品もここでしか手に入らない 富岡鉄斎の筆をもとにつくられた看板

栗蒸し羊羹
口溶け絶品!栗蒸し羊羹
 取材にうかがったのはある晩秋の午後。季節柄、来店するお客さんが皆、口にするのがこちらの名物菓子の一つ『栗蒸し羊羹』でした。
 竹の皮に包まれたちょっと贅沢な羊羹で、秋の声を聞く10月頃からお店に並ぶ季節商品です。多くのお店が栗のお菓子は年内で終えてしまうのですが、こちらでは、材料の栗を工面し、翌春の桜の季節辺りまで用意していらっしゃるそうです。(四月からは、これまた名物の水羊羹が並びます)
栗蒸し羊羹の外包み
竹の皮のまま切ってください
 栗羊羹を戴く時のコツは、包んでいる竹の皮を剥かずにそのままざっくりと包丁で切ること。すると、羊羹にしみ込んだ爽やかな香りが、口にする時にほんのりと香ります。舌に乗せた時の感触はまるで絹のような舌触り!この口溶けの柔らかさ、潤い、そしてきめ細かさは、羊羹好きの私も他では経験したことがありませんでした。
 「蒸す前の生地の水分量が命ですね。」と、美味しさのポイントを教えて下さったのが、息子の山本雅之さん(37)。
 良質な小豆や栗を中心に、日持ちするための余計な物は一切入れないという創業以来のこだわりや、どこで手を止めるか等の職人さんの勘が、この見事な風味を生み出していたのです。
竹皮のまま切った栗蒸し羊羹

京都府が次世代に伝えたかったお菓子〜とりどり最中
 栗蒸し羊羹は戦後まもなく生まれたお菓子だそうですが、戦前からこちらの名物菓子だったのが、「先ずは召しませ、試しませ」で知られる『とりどり最中(もなか)』です。
 女性の手のひらにちょうどのる大きさですが、一般的な最中よりは少し大きめ。
 四つに仕切られたガワに、こしあん、粒あん、柚あん、白粒あんの四種類の餡を詰めるのは、必ず注文を受けてから。その訳は、ガワのパリッとした食感と餡の潤いとのバランスを考慮して、食べる時に一番美味しくなるようにとの細やかな心遣いからなのです。

 この『とりどり最中』にはちょっとしたストーリーがあります。 日本中に戦渦が広がりつつあった昭和17年12月、物資は統制され、お菓子屋さんは開店休業を余儀なくされていた時、京都府は、「和生菓子特殊銘柄品」として18品目の銘柄を指定したそうです。
  これは、「どんなに戦時色が濃くなろうとも京菓子の伝統を絶やすわけにはいかない」という心意気の表れだったのではないでしょうか。
 「とりどり最中」がいかに京都にとって大切なお菓子であったかがうかがえるエピソードです。


季節の絵柄がはいっています あんは4種類 とりどり最中の外袋
春夏秋冬、季節の絵柄に合わせて4種類のあんが入っています。 白粒あん(冬)、粒あん(春)
こしあん(秋)、柚あん(夏)
とりどり最中の外袋には、舞妓さんが最初に習う唄がかかれています

五しき最中
とりどり最中と並ぶ甘泉堂の看板商品「五しき最中」は、5色のガワにそれぞれ5種類のあんがはいっている
あんは、味噌あん(薄ずみ)、大納言粒あん(白)、斗六つぶしあん(桃)、柚あん(緑)、小豆こしあん(茶)の5種類

店売りを大切にしたい〜祇園とともに歩む店
 甘泉堂さんは、京言葉で優しくお客さんを迎える女将さんと、菓子作りを担当するご主人、そして息子の雅之さんの親子三人だけのお店です。
 雅之さんは、もともと家業を継ぐつもりはなかったそうですが、6年前、老舗の味を守るため自ら一念発起されました。以後、修行を重ね、少しずつお店を任される分量も増えてきた今、雅之さんは、お店に新たな風を吹き込みつつありあます。それは、これまでとは気風の違う生菓子。京菓子協同組合の持寄会から年4回出るお題に取り組み、研鑽を重ね、淡い彩りの優しいお菓子が店に並ぶようになりました。

 今や全国から人気のある甘泉堂のお菓子。広げる予定は?とお聞きしたところ、「お客さんの反応を直に感じられる今の場所での『店売り』が好きだから」とのことでした。
 祇園の夜のお土産に、と陽が落ちてもお客さんが絶えない甘泉堂さんは、夜10時までお店に灯りを点していらっしゃいます。貴方も祇園の「ろーじ」へちょっと足を踏み入れてみませんか?


生菓子
京菓子協同組合の持寄会に出品された生菓子 左から「初音」「お年玉」「初夢」「つくばね」「一歩一歩」「乙酉」
( ライター:高橋知子 )

※この記事の情報は公開時( 2004-12-06 )のものです。

京の詩季彩甘泉堂
周辺案内アンケート印刷用ページ
京都市東山区祇園東富永町
TEL : 075-561-2133

アクセス 京阪四条駅より徒歩約10分
阪急四条駅より徒歩約13分
市バス祇園停留所より徒歩約2分

駐車場 なし

時間 10:00〜22:00

休み 日曜日


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